悪いこと

なんとなく、「あ、今自分には運が味方してないな」と感じる時が

誰にでもあると思う。

 

そういう時は、グッと堪えてただそのバッドな巡り合わせによって

起きているバッドなことが過ぎ去るのを待つのだが

何かの瞬間、心の緊張が解れてバッドにやられそうになる。

 

それは誰かの優しさであったり、はたまた追い討ちのように襲いかかってくる

更なるバッドであったり。

 

私が今日経験したのは後者。そう、更なるバッドだ。

 

ここ最近、変な輩にストーカーまがいのことをされたり

世界中の人間が、そのストーカー野郎以外私のことを忘れてしまったのではないかと思うほど、携帯が鳴らなくて孤独を感じていた。

 

悶々とした暑い夏の日を、ひたすら満員電車に揉まれながら

会社へ向かい、不条理な難題にも嫌な顔せず仕事として向き合ってきた私の家に

ここ最近、「蚊」が住んでいるのである。

 

正確に言うと、さっきの瞬間まで

蚊が住んでいそう、という感じだった。

 

なぜなら、このワンルームアパートの狭い部屋の中で

蚊など一度も見ていないのだ。

なのに、なぜか一晩で1箇所ずつ、蚊に刺されが増えるのだ。

 

白い壁に蚊が止まっていれば

すぐに気づく。どうせダニだろ、掃除しろ。とまで

親に言われていた私は「何年生きてると思ってんだ。蚊に刺されとダニ刺されの区別くらい分かっとる・・!」と思っていたが

いかんせん、蚊の姿を見ないからどうしようもない。

 

そんな中、またストーカー野郎からLINEが来た。

「あぁ、またか・・・」と憂鬱で恐怖と戦っている中視線を

壁掛け時計に向けた。

 

いた・・・!蚊!

しかも体が赤くパンパンに膨れている・・・!

(また吸ったんか・・!!)

 

そこで静かにソファから立ち上がって

ティッシュを2枚シュシュっと取る。

 

やっと見つけた犯人の姿に高鳴る鼓動を抑えながら

息を殺して近づく。

 

そしてサッとティッシュを壁に押さえつけた僕!

蚊は確実にティッシュの中に収まった!

ギュッギュっとティッシュを壁につけたまま摘む僕!

 

そして、片手は壁にティッシュ

もう片手は勝利のピースサインを準備しながら

そっと壁からティッシュを離す。

 

そして遺体を確認しようとしたその瞬間、

ヨタヨタになった蚊がプォ〜ンと飛んでいってしまったのである!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

ちくしょう!間接照明にこだわっている部屋では

飛んでる蚊を見つけることなぞ至難の技。

 

一瞬は手中に収めた憎き蚊を

逃した。しかもかなり本気で挑んだ勝負。負けた。

また刺される。また刺される。蚊に負けた。

 

その瞬間、これまで感じていた

孤独やらストーカーへの嫌悪感やら仕事へのストレスやら

全てのネガティブが一気に襲いかかり・・・

 

僕は泣いた。

 

 

端から見たら、蚊を殺そうとして失敗して泣いてる奴、という状況である。

 

蚊の寿命を調べてみた。

36ー42日間生きるらしい。

 

 

まじか。蚊。